家庭や園・学校では、出かける場所、担当する大人、活動の順番などが予定どおりにならないことがあります。予定の変更を知ったときに、強く拒否したり動けなくなったりする子どもがいても、まず「納得させる」ことを急がず、何が変わるのか、次の情報をいつ確認できるのかを整理して伝えます。
この記事の要点:変更点・変わらないこと・まだ決まっていないことを分け、本人の読み方に合う形で見せます。実際に選べる場面では選択肢を用意し、選べない場面では形式的な二択を作らず、休む・手伝いを求める方法を残します。急な変更で困りが強いときは、安全と落ち着きを先に考えます。
予定変更を「わがまま」と決めつけず、情報を整える
予定変更への反応は、本人が変化を嫌っているという一言では説明できません。次の見通しが持ちにくい、口頭で聞いた情報をその場で受け取りにくい、集団への説明が自分にも向けられたと分かりにくいなど、いくつかの可能性があります。公的な支援資料でも、変更が難しいときは、まずどの情報や環境が負担になっているのかを確かめるよう示されています。
国立特別支援教育総合研究所の資料では、予定を前日と当日の朝に知らせる、変更前後の予定を視覚的に示す、本人に向けて説明していると分かるよう名前を呼ぶ、といった支援例が紹介されています。これはすべての子どもに同じ結果を約束する手順ではありません。本人の反応を見ながら、伝える時点、量、方法を調整するための出発点として使います。
大人が最初に確認したいのは、「変更を受け入れられるか」ではなく、今、確定している情報は何かです。決まっていないことまで断言すると、次の変更が増えます。分かっていることと分からないことを分けるだけでも、伝える内容が短くなります。
まず「変わること」と「変わらないこと」を分ける
変更を伝えるときは、予定表を全部作り直すより、変わる部分を示す方が分かりやすい場合があります。次のように、三つの欄に分けて書いてみます。時刻や活動は、実際に決まっているものだけを入れてください。
- 変わること
- 公園で遊ぶ予定が、室内遊びになる。担当する大人が変わる。活動の順番が入れ替わる。
- 変わらないこと
- おやつの時刻や帰る時刻など、確認できている予定。大人がそばにいることなど、実際に用意できる支援。
- まだ決まっていないこと
- 外で遊べるか、室内活動の細かな順番など。決まっていない欄は「確認中」と書く。
「変わらないこと」は、安心させるために大人が足す約束ではありません。確認できる場合だけ示します。たとえば帰る時刻をまだ決められないなら、「帰る時間はあとでね」と曖昧にせず、「今は決まっていません。14時に先生が天気を確認し、分かったことを伝えます」のように、次に確認する時点を伝えます。14時に確認できる体制がない場合は、その時刻を約束しません。「確認できたら伝えます。分からない間はこのカードを置いておきます」と、現実にできる方法を選びます。
雨で公園に行けない日の伝え方(架空の場面)
ここからは、説明の組み立てを示すための架空の場面です。実際の家庭や園・学校の出来事を紹介するものではありません。
午前中に公園へ行く予定でしたが、雨で足元が滑りやすくなり、安全のため外遊びを取りやめました。大人が次の予定を確認してから、本人に目線を向け、予定表やカードを見せます。
- いま:教室で待つ
- つぎ:室内遊び
- 変更:公園には今日は行かない
- 確認中:午後、園庭で遊べるか
声かけは、理由を長く説明するより、変更を先に短く伝えます。「予定が変わります。今日は公園には行きません。次は室内遊びです」と言い、少し待ちます。続けて「おやつの時間は11時で決まっています」など、確認できていることだけを加えます。帰る時刻が決まっていないなら、書き足しません。
室内遊びの内容が選べるなら、「ブロックか絵を描くか、どちらにする?」と実際に用意できる選択肢を示します。今すぐ選ぶことが難しそうなら、「カードを見てから決めてもいい。休憩場所も使える」と伝えます。選択肢が一つしかないのに二択にしたり、帰宅を選べない状況で「室内遊びと帰るのはどっち?」と聞いたりすると、本人に決定の責任だけを渡すことになります。
「雨が止むかは、今は分かりません。14時にもう一度確認し、分かったことを伝えます」と言えるのは、その確認を本当に行える場合です。決められないことを「あとで」と約束せず、確定するまでの過ごし方を別に用意します。
伝える時点と、見せる素材を選ぶ
変更が前もって分かるときは、前日と当日の朝のように複数回知らせる方法があります。突然の変更では、まず安全を確保してから、直前に必要な情報を短く示します。何度も同じ説明を重ねるより、「変更した部分」と「次にすること」を同じ表現で見せる方が確認しやすい場合があります。
文字を読む子どもには短い言葉、写真が分かりやすい子どもには実際の場所や物の写真、指さしが使いやすい子どもにはカードや絵を使うなど、読み方に合う素材を選びます。絵なら誰でも分かる、文字なら大丈夫、と決めつけません。本人と一緒に一つのカードを試し、言葉や指さし、表情などで受け取り方を確かめます。次の活動に移れたかどうかだけで、理解できたと判断しないことも大切です。分かっていても、まだ気持ちが追いつかない場合があります。文字の大きさ、色のコントラスト、カードの数も調整します。
当サイトの1日の予定表は、順番や予定変更を見える形で確認するための6枠シートです。すべての枠を埋める必要はなく、本人が必要とする部分だけ使います。直前の「いま・つぎ」だけを示したいときは、いま・つぎボードのように二つの活動に絞る方法があります。時刻や活動を並べ、変更を書き込みたい場合は、予定表メーカーを支援者が作成し、本人に合う量にして見せます。
そのまま使える声かけと選択肢
声かけは、理由、変更点、次の行動を一文ずつに分けると整理しやすくなります。以下は例です。実際の状況に合わせ、決まっている部分だけ残してください。
- 「予定が変わります。公園は今日は行きません」
- 「変わるのは公園の部分です。帰る時刻は15時の予定です」
- 「次は室内遊びです。今すぐ選ばなくても大丈夫。カードを見てから伝えてもいいよ」
- 「雨が止むかはまだ分かりません。14時に確認して、分かったことを伝えます」
- 「困ったら『休みたい』『手伝って』を指さして知らせられます」
選択肢は、本人が本当に選べる範囲で用意します。活動を選べるなら二つの写真を並べる、場所を選べるなら静かな席といつもの席を示す、伝え方を選べるならカードを見るか大人が読むかを聞く、といった方法です。「今は選ばない」「大人と一緒に決める」も選択肢に含められます。本人が指さしや言葉で断ったときは、その反応を情報として受け取り、同じ問いを繰り返して従わせようとしません。
助けを求める言葉が出にくい場面では、お願い・ヘルプカードのように、「手伝って」「休みたい」「待って」などを指さして伝える素材を使えます。カードの数や大きさは本人に合わせ、普段から使い方を一緒に確かめます。困っている最中に初めて渡して、必ず使うよう求めるものではありません。
困りが強い時は、安全と落ち着きを優先する
変更を伝えたあとに、走り出す、物にぶつかる、耳をふさぐ、床に座り込むなどの様子が見られたら、説明を足す前に危険がないか確認します。危険がある場合は説明を止め、安全の確保を優先し、近くの大人に応援を求めます。園や学校の安全計画・家庭で決めた対応に沿って、本人と周囲を守れる場所や人数を確保します。
安全を確保したら、質問を減らし、声の大きさや距離も本人に合わせて、「ここで休めます」「カードは見なくても大丈夫」と短く伝えます。理由を説明するよう求めたり、「言葉で言って」と繰り返したりしません。普段から使っている休憩場所やヘルプカードがあれば本人が使える位置に置きますが、手を伸ばせないときは大人が代わりに環境を整えます。落ち着いてから、何が変わったか、次の確認をいつ行うかをもう一度少量で示します。
家庭・園・学校で記録をつなぐ
その日の様子を「パニックになった」「言うことを聞かなかった」とだけ記録すると、次の支援に必要な情報が残りません。時刻、直前の具体的な出来事、伝えた言葉やカード、本人が示した行動、安全のためにしたことを短く共有します。本人の体調や睡眠などの背景情報を書く場合は、直前の出来事と同じ欄に混ぜず、別に記録します。
行動の前後を整理するABCの観察を使う場合も、診断名をつけるためではありません。Aはその場の直前に起きた具体的な状況、Bは見えた行動、Cはその後に大人や環境がどう変わったかとして書きます。たとえば「9時20分、外遊び中止を口頭だけで伝えた」「予定表を押しのけて廊下へ出ようとした」「安全な部屋へ移り、いま・つぎカードを置いた」のように、観察できる言葉にします。ABCの見方は、既存のABC観察の記事も参照してください。
記録は、本人を評価するためではなく、次回の伝え方をチームで考える材料です。「前日に変更を知らせる」「本人の名前を呼んでからカードを見せる」「選択を急がせない」など、次に試す案を一つに絞り、本人の反応を聞きながら見直します。こども家庭庁のガイドライン概要も、子どもと保護者の意向を確かめ、環境や伝え方の障壁を検討し、関係者で情報共有する考え方を示しています。
Webツールには氏名や診断名、健康情報、支援記録などの個人情報を入力しないでください。印刷した予定表や記録は、家庭・所属先のルールに沿って扱います。
参考資料
- 国立特別支援教育総合研究所・発達障害教育推進センター「予定の変更に対応するための指導・支援」:変更の要因を考え、前日・当日の朝に知らせる、変更前後を視覚的に示す、本人に向けて伝えるといった支援例を確認しました。
- 国立特別支援教育総合研究所・発達障害教育推進センター「予定の変更に対処できないのですが・・・」:予定変更時の見通し、口頭説明の受け取りにくさ、本人への明示、記録と共有についての事例を確認しました。
- こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)概要」:子どもと保護者の意向を聞き、環境・コミュニケーションの障壁を検討し、関係者で情報共有する考え方を確認しました。
公的資料に示された例は、本人や場面に合わせて調整して使います。予定変更を伝える目的は、子どもに無理に従わせることではなく、分かっている情報を共有し、本人が断る・休む・助けを求める方法を含めて次の一歩を一緒に考えられるようにすることです。
参考資料の確認日:2026年10月15日。

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